「速い脳」と「遅い脳」

突然ですが、問題です。

5台の機械は5分間で5個のおもちゃを作ります。
100台の機械が100個のおもちゃを作るのに何分かかりますか??

答えは、5分です。
この機械1台は5分で1個のおもちゃをつくる能力を有しているため、同じ機械が5台あれば5分で5台、100台あれば5分で100個のおもちゃをつくれることになります。

冷静に考えればわかりますよね。

でも直感的に答えようとした人の多くは、数字の並びにだまされて「100分」と答えてしまいます。

この問題は、ダニエル・カーネマンが著した『ファスト&スロー』(早川書房)の中で掲載されていたもので、この著作では、人間の脳には「直感的で速い思考をする脳」(=ファスト脳)と「頭を使って遅い思考をする脳」(=スロー脳)の二つの脳が存在するということを述べています。

ファスト脳は、過去の経験や記憶から直感的に物事を判断する脳です。この脳を使った判断は無意識に自動的に行われるためほとんどエネルギーを使わずに行うことができます。しかし、その分判断を誤ってしまう可能性が高いです。

一方スロー脳は、じっくりと時間をかけて分析や熟考を重ねる中で一つの正しい判断を導いていく脳です。この脳を使った判断は冷静で客観的なものになる可能性が高く、失敗や間違いを減らすことができます。しかし、考えることに脳のエネルギーを多く使うため、脳が疲れやすくなるというデメリットがあります。

先ほどの問題で、直感的に瞬時に答えを導きだそうとした人が間違えやすかったのはそのためです。

では、常にスロー脳で物事を判断しなければならないのか、といえばそうではありません。

実は人間が1日に使える脳のエネルギーには限りがあるのです。

そのため常にスロー脳で物事を判断しようとすると、脳が疲れて、思考停止に陥ってしまい、かえって判断を誤ってしまうことが多くなります。

要は、「ファスト脳」と「スロー脳」の使い分け、メリハリが重要だということです。

例えば、過去の経験に頼って実行しても問題のない作業や、失敗してもそんなに重大なミスにならない作業は「ファスト脳」を使ってやり、

この作業をミスしてしまうと自分の将来や自分の周囲などに大きなトラブルをもたらしてしまうかもしれないというような、重大なものは「スロー脳」を使ってやるというメリハリです。

おそらく、どの作業が一番重要で、何がそんなに重要じゃないかというのは人それぞれ違ってくると思うので、自分の中で物事の重要度・優先度を見極める練習もしてみてください。

脳は酷使しすぎても、怠けさせすぎてもダメです。

『ファスト&スロー』の思考を使って、より効率的な脳の使い方を考えてみてください。

リトルステップ 塾担当 渡部岳(わたなべがく

投稿者プロフィール

watanabe
watanabeリトルステップ塾講師
リトルステップで学習塾を担当している渡辺です。
高畑小学校→道塚小学校→六郷中学校→東京高等学校→明治大学政治経済学部。
大学では『都市政策』専門家の市川宏雄教授のもとでゼミ活動を行い、その中で大田区長に対して「大田区の外国人観光客向け観光プラン」の政策提言を行いました。また、文学部で教職員課程の教授でもある齋藤孝教授から2年間教育方法・授業論等を学び、その教えを基に現在教育活動を行っています。
2019年3月まで学校現場でクラス担任をやっていて、現在も非常勤講師として学校現場に携わっています。
学校と塾と家庭の連携を図り、子どもたちをより良い進路へと導いていけるように最善を尽くします。よろしくお願い致します。