感染は恐ろしい

新型コロナウィルスの影響で、日本国内では緊急事態宣言の効力が一か月程度延長されることが決定しました。本当に恐ろしいウィルスだと実感いたします。

最近は家で過ごす機会が増え、私はたくさんの本を読んだり映画をみたりして過ごしているのですが、その中で「感染症」の怖さを知るものにもいくつか出会いました。

 

フランス人作家のカミュが書いた「ペスト」という作品では、ペスト菌が蔓延する社会を描いており、自分がペストにかかって死ぬかもしれない不安と非常事態宣言が出されいつ日常が取り戻されるのかという苦悩を見事に描写した作品となっていました。まさに今の世界の社会情勢と重なります。

私たちもいつ自分がコロナウィルスにかかってしまうのか不安です。学校がいつ始まるのか、仕事がいつから普通にできるようになるのか、自分の会社はどうなってしまうのか、日々そんな不安にさいなまれています。しかし、カミュはこの本の中で、最も恐ろしいことはそのような今感じている不安ではないと言います。

 

「絶望に慣れることは絶望そのものより悪いのだ」

 

最近では、テレビをつければ、新型コロナウィルスのニュースが日々目に飛び込んできます。「今日は何人の人が感染しました」「今日は何人の人が亡くなりました」と。

まだ感染が広がりかけている段階では、そのニュースを見るたびに、「こんなに早く感染が広がるのか」「こんなに人が死んでしまうのか」という恐怖を強く感じました。しかし、毎日そのようなニュースを見ていると、それが当たり前のものとして人間は慣れてしまう習性を持っています。そうなってしまうと、人間はその当たり前の出来事に対して、「かかったらもうしょうがない」とか「なるようになるしかない」といった一種の諦めの感情を持ち始め、希望を見失ってしまうということもあるのです。そのため、「どうせかかってしまうのなら今楽しんだほうがいいだろう」と考えて自粛ムードの世の中で自粛をせずに自分さえよければの考えが出てしまうということもでてきてしまうのでしょう。

やはり、カミュの言うように未来に対する絶望を感じてしまうということが、感染症の何よりも恐ろしいことなのかもしれません。

そうならないために、私たちは毎日流れるニュースを意識的に新鮮なものとしてとらえて、本当に今目の前で私たちに起こっている恐ろしい出来事として、認識し直し続ける必要があるのではないかなと思います。

 

と同時に、私は先週「感染列島」という映画をみました。この映画は正体不明のウィルスがある医療現場から広がり、そのウィルスが院内感染で患者や医療スタッフにまで広がっていって、「医療崩壊」が起こってしまう状況を描いた作品となっています。

今、私たちの世界でも新型コロナウィルス蔓延による「医療崩壊」の危機が叫ばれています。しかし医療現場を実際に見ていない私たちからすれば、どういう状態が医療崩壊で、それが起こるとどうなってしまうのかというイメージはなかなかわいてきません。しかし、「感染列島」で描かれている医療崩壊は凄まじく恐ろしいものでした。

 

感染症にかかっている患者さんを処置した医師が感染し亡くなる。

患者同士での感染が広がる。

医療スタッフの増員が行われ、スタッフは「感染リスクが高い」ということを承知の上で現場に配置される。

感染病棟に配置された医療スタッフは一切帰宅することができない。家族との面会も禁止。

日々感染者が病院に運ばれてきてベッド数が足りなくなる。

酸素マスクが足りなくなり、比較的助かる見込みのある人にマスクが供給され、そうでない人の命が次から次へと奪われていく。

感染者が増えるにも関わらず効果的な療法が見つからず、助けられる命を助けられない状況が日に日に増えていく。

 

病棟内が医療ベッドで埋め尽くされ、苦しむ患者が大多数の中、急ピッチで患者の処置にあたる少数の医療スタッフ。考えている余地もなく瞬時に命の選別をし酸素マスクを移し替え、目の前で次から次へと死んでいく人たち。そしてその状況に耐えられたくなり逃げ出して精神的に崩壊する医師やナースたち。

まさに地獄絵図です。

 

こういう状況が、今の私たちの社会では起こらないとは言い切れないのではないかと思います。実際に今でもベッド数が足りない、ICUの数が足りない、医療器具が足りなくなっていることなどが連日ニュースで報道されています。実際に医療現場で働くスタッフの映像をニュースで見ていると、日々感染のリスクと隣り合わせで新型コロナウィルスの患者さんの処置にあたり、感染予防のための防護服も足りなくなって自前で用意する病院もありました。病院での仕事を終えて家に帰るときも、自分が家族に感染させてしまうのではないかという不安にさいなまれながら帰宅の途についている医療スタッフの方の様子も映っていました。

こうした様子を見て私は改めて、感染しないために、感染させないために、また医療崩壊を防ぐために、感染予防に対する意識を高めていかなければいけないと強く思いました。

 

第一線で働いている医療現場の人たちのためにも、私たちの未来の生活のためにも、感染症の恐ろしさをもう一度認識し直し、感染予防に一人一人が意識を高く持って、努めていく必要があるのだろうと私は感じます。

 

リトルステップ 塾担当 渡部岳(わたなべがく

投稿者プロフィール

watanabe
watanabeリトルステップ塾講師
リトルステップで学習塾を担当している渡辺です。
高畑小学校→道塚小学校→六郷中学校→東京高等学校→明治大学政治経済学部。
大学では『都市政策』専門家の市川宏雄教授のもとでゼミ活動を行い、その中で大田区長に対して「大田区の外国人観光客向け観光プラン」の政策提言を行いました。また、文学部で教職員課程の教授でもある齋藤孝教授から2年間教育方法・授業論等を学び、その教えを基に現在教育活動を行っています。
2019年3月まで学校現場でクラス担任をやっていて、現在も非常勤講師として学校現場に携わっています。
学校と塾と家庭の連携を図り、子どもたちをより良い進路へと導いていけるように最善を尽くします。よろしくお願い致します。