「9回表。ツーアウトランナーなし。先発ピッチャーのガララーガ、史上21人目の完全試合まであと1人になりました。カウント、ワンボール・ワンストライクから、第3球目を、投げました。打った、一二塁間へのゴロだ。ファースト、逆シングルで捕った。ピッチャー、ベースカバーに入る。ファーストが余裕をもってファーストベースへ送球。ピッチャー、ボールを捕球してベースを踏んだー!完全じ…、あーっとセーフだ!セーフ!一塁塁審のジョイス、セーフの判定です!!」
2010年6月2日に行われた、メジャーリーグのタイガース対インディアンスの試合で、このたった1つの誤審により、タイガースのピッチャー・ガララーガは「完全試合」という歴史的偉業のチャンスを失いました。
野球にあまり詳しくない人のために説明を加えておきますと、「完全試合」とはピッチャーが1人のランナーを出すこともなく、もちろん1点も点数を取られることもなく、1試合を完璧に抑えきることをいいます。
この試合では、9回の1塁塁審の誰がみても明らかな誤審によって、その「完全試合」の夢がついえたのです。
試合後、誤審をした1塁塁審のジョイスは、あらゆる野球ファンや世間から激しい非難を浴びせられました。
そして、実際に自分が誤審をした場面を試合後にビデオで確認したジョイスは、その場で誤りを認め、泣き崩れました。
「もう二度と球場に足を踏み入れることができないかもしれない」
ジョイスはそう思ったことでしょう。
でも、その2日後に同じ、タイガース対インディアンス戦で再び主審を務めることがすでに決まっていました。
いろいろな葛藤の中、ジョイスはガララーガのもとに直接謝罪に行きました。
するとガララーガは笑顔で彼を迎え入れ、熱く抱擁をして彼を許し、こう言ったのです。
「たぶん僕よりも彼のほうが辛い思いをしているだろう。完璧な人間などいやしないさ」と。
そして2日後の試合、ファンからの大バッシングを覚悟の上、ジョイスは再びグラウンドに姿を現しました。
スタンドはやはりジョイスに向けてブーイングの嵐でした。
そのような中でその日出場予定のないガララーガが試合前にベンチから出てきました。
そして、ガララーガはジョイスと一言二言会話をし、お互いの肩を軽く叩き合って、最後は握手をしてベンチに戻っていきました。
その瞬間、グラウンドの空気は一変し、スタンドはブーイングから暖かい拍手に包まれたのです。
この出来事からみなさんに伝えたい教訓がこれです。
「たった一つの誤りに埋もれた、無数の英断を見よ」
人間はどうしても自分や他人の悪い部分にばかり目が行きがちで、そこばかりを拡大してみてしまいます。
そうするとあたかも自分や他人が行っているすべてのことが悪いように見えてきてしまいます。
実際には、その一つの間違いよりもはるかに多い正しい決断をしてきたのにもかかわらず、その英断がすべて忘れ去られてしまうのです。
そうすると簡単に他人を批判して傷つけてしまったり、失敗を恐れて何も行動できなくなってしまったりするのです。
人間だれしも失敗をします。間違いをおかします。
でも、その裏には数多くの無数の正しい判断もあったはずです。
テストで全体的な成績は悪かったけど、でもこの1科目はよかった。今までよりもテストに向けた勉強時間をちゃんと確保してきた。
いつもよりもちゃんと計画的にテスト勉強を進められた。テスト前までは知らなかった知識を少しでも知ることができた。などなど、
一つの失敗の裏には必ず多くの成功体験もあるはずです。
そうしたうまくいったところにもしっかりと目を向けて、
次の行動を起こす勇気に変えていってください。
他人の誤りを責めなかったガララーガ。
失敗をしっかりと認めて反省し、勇気を出してもう一歩踏み出したジョイス。
この2人の英断をぜひ見習っていきたいですね。
リトルステップ 塾担当 渡部岳(わたなべがく)
投稿者プロフィール
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リトルステップで学習塾を担当している渡辺です。
高畑小学校→道塚小学校→六郷中学校→東京高等学校→明治大学政治経済学部。
大学では『都市政策』専門家の市川宏雄教授のもとでゼミ活動を行い、その中で大田区長に対して「大田区の外国人観光客向け観光プラン」の政策提言を行いました。また、文学部で教職員課程の教授でもある齋藤孝教授から2年間教育方法・授業論等を学び、その教えを基に現在教育活動を行っています。
2019年3月まで学校現場でクラス担任をやっていて、現在も非常勤講師として学校現場に携わっています。
学校と塾と家庭の連携を図り、子どもたちをより良い進路へと導いていけるように最善を尽くします。よろしくお願い致します。
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